千住桜木、純喫茶の思い出

このブログを書くにあたって純喫茶の定義を調べたのですが、どうやら純喫茶とは酒類の提供をせず、純粋にコーヒーや紅茶を楽しむ喫茶店のことのようです。
僕の純喫茶のイメージと概ね一緒でしたが、自分はさらに「テレビがない」「タバコが吸える」ことも僕なりの純喫茶の定義でした。

自分が20代の終わりのころ、荒川区は町屋の荒木田ふれあい館で楽器の練習をしたあと読書をしに純喫茶に通うのが小さな楽しみでした。
ところが僕の純喫茶定義「テレビがない」という条件は意外と厳しく、お店も限られておりました。
町屋駅のすぐ近くにあった名店「カラビナ」は本当にコーヒーが美味しく暖炉があるとっても素敵なお店でしたが、いつの間にかテレビが入っていてなんとなく読書に集中できないときがありました。
そうです、自分にとってはBGMも大事だったのです。
一番良いのは無音、そうでなければJAZZなどインスト、クラシックであればなお良い。
そうなってくるとさらにお店は限られてきます。

結果、自分が行き着いたのは千住桜木町にあった「山楽喫茶 千寿山荘」という喫茶店でした。
名前の通り山好きの一見寡黙(実はおしゃべり好き)なマスターが営む喫茶店で、クラシックがかかり、長居しても怒られないというなんとも居心地の良いお店でした。
通っているうちに自然とマスターとも会話するようになり、自分の生業(当時は食えていませんでしたが)やスタジオを探していること、地元が近いことなど話していると「うちの地下が空いているよ」と驚きの一言が。
すぐにオーナーに連絡を取っていただき、とんとん拍子に話は進みそこに居を構えることになったのです。
住ませていただくにあたり音を出せるスタジオにしたかったので壁を二重にしたい、新たに台所を設置したい旨等々の了承を得て、材木屋の先輩や大工の友達と協力して数週間DIYしまくって理想のスタジオを作りました。

(自作キッチン。配管のみの空間から壁を設置、シンクや作業台からレンジフードまでオークション等で集めました。)

(全体像。奥の1800mm×900mmのテーブルは幼少期は家族のダイニングテーブル、そして中学時代から現在まで作業テーブルとしてずっと使い続けております。)

(壁にはロックウール、グラスウールを仕込み、全面石膏ボードフィニッシュ。)

こんなことをさせてくれる賃貸の物件など滅多にありません。オーナーの老夫婦は本当に理解のある方でした。
千寿山荘のマスターも山好きでしたが、オーナー夫婦もまた気合の入った山好きで、全身ビンテージのモンベルで登場することもしばしば。僕のモンベル好きもそこで拍車がかかりました。
また、コーヒーもそこでハマりました。
古いカリタの大型ミルを購入し(今でもバリバリ現役で使っております)、さまざまなドリッパーを試し、山谷の名店「バッハ」に通い美味しいコーヒーの淹れ方を研究しました。(直接教えてくれるのではなく、近くで見てて良いよ、という素敵な店員さんがいらっしゃったのです)。
やはりその頃、千寿山荘の常連客の方にビンテージのクロモリロードレーサーをもらい受け、チューニングにハマりまくりました。
全バラししてビルの屋上でオールペンし、パーツを集め(自分的に)最強のロードを組み上げ、荒川をひた走りました。
もちろんそのロードは今でも健在です。

(僕の愛するクロモリロード。SEMASのフレーム以外ほぼ全てパーツを交換してあります。)

そんなわけで当時の自分はというと朝一で楽器を担ぎ荒川を輪行しナイススポットで練習し、午後にはオーナーの好きな酸味系のコーヒーを淹れて感想を聞き、午後は地下スタジオで練習…という夢のような生活を送っていたのでした。

そんな楽しい時代も自分の生活環境の変化で離れることになりました。
不思議な縁もあるもので僕がそのスタジオ物件を離れるとき、同門でギタリスト、しかも自転車好きの下町っこという男が現れ、彼に引き継いだのでした。

さらに時は流れ残念ながら千寿山荘はクローズしてしまいましたが、本当に不思議なものでなんと自転車好き、レゲエ好き、山好きで燻製好きという奇跡的な男が千寿山荘を引き継ぎ、「Out Door Dining CLIMB」というお店をオープンしました。

(現在のOut Door Dining CLIMB。)

そんなCLIMBもオープンしてはや8年というから驚きです。
CLIMBのマスターは先日のbonobosの野音ラストにも来てくれました。
ちなみにオーナーとは今でも連絡を取り合っています。
彼ら無しでは今の自分の価値観、人生は到底あり得ませんでした。
千寿山荘界隈の登場人物には感謝しかありません。

千住桜木は荒川と隅田川が最も近づく場所のひとつです。
川好きには堪りません。激シブです。慈しみ深く、大変ドラマチックな街です。
またCLIMBは都バスの千住桜木停車場から徒歩0秒。
入り口に鎮座する店長の超かっこいいグラベルロードレーサーが目印です。
荒川からかなり近いので輪行の休憩にもうってつけです。
皆さまも機会ありましたら是非CLIMBを訪れてください。

それではまた。

2 thoughts on “千住桜木、純喫茶の思い出

  1. 龍平さん、こんばんは。

    龍平さんのこだわりが詰まったお部屋かっこいいですね!キッチンまわりもご自身でお作りになったとは、、びっくりしました。

    カラビナは僕もよく行っていました。
    コーヒー美味しかったですよね。
    懐かしい、、。
    個人的には駅前にあったみどり園も好きでした。ナポリタンが美味しくて😄

    CLIMB、まだお伺いしたことないので今度家族で行こうと思います!(小さい娘が2人いる4人家族なのですが先日は家族で野音に行かせて頂きました。あの日は一生ものの素晴らしい思い出ができました。本当にありがとうございます)

    これからも応援してます!
    ちなみに荒木田ふれあい館、めちゃくちゃ近所でびっくりしました。

    1. なんと!超ローカルネタで嬉しいです。
      みどり園はぼくも時々行ってました。
      途中どんどんパスタのメニューが増えて美味しかった記憶があります。
      夜にトランペットの生練習の音がよく漏れ聞こえてた記憶もあります。
      にしてもふれあい館の近くですか。
      てことは尾久の原公園にもよく行かれるのではないでしょうか。
      ぼくもだいぶ通いました。
      野音もありがとうございます。
      現在映像編集作業を進めておりますので公開までいましばらくお待ちください!

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